私は今もぐりで講習員をやっている。お店に所属していないし、仕事がコンスタントにある訳でもない。相手にしてるのは同期、後輩、その直接の紹介だけ。商売と言うのもおこがましいけど、一応商売として成り立ってるから、もぐりの講習員を名乗らせてほしい。
多分私みたいに知名度もない、お店に雇われても居ない野良は珍しい。いや、ほぼ居ない。私は聞いたこと無いなー。
それでも私は講習を続けるし、ありがたいことに頼ってきてくれる女の子たちが居る。講習を始めたきっかけとか、今も続ける理由を話そうと思う。
スター選手が名監督とは限らない
講習員に必要な要素がある。実績・キャリア・知名度の3つ。実績は長期間NO.1もしくはそれ相当の評判があること。キャリアは業界歴。知名度は誰もが知る、知る人ぞ知る知名度がいる。
伝説の〇〇さん!が講習をしています、を売りにしているお店が増えてるなーと思う。顧客心理からすると「あの〇〇さんが講習をしてるならサービスが良さそう」と思うんじゃないか。
でも冷静に考えてほしい。名選手が名監督とは限らない。名選手が持ってるのは素晴らしいノウハウ。でもそれを言語化してわかりやすく伝えるのは別の能力だ。
一人の先生との出会い
鳴かず飛ばずの時代に私は講習を受け散らかしている。売れなくても努力はしていた。ところが全く伸びない。どこそこの不動のNO.1のお力を借りてもダメだった。
ところがお店に新しい講習員の先生が来た。ちょっと珍しくて出自がわからない、地味な女性。ところがこの先生が名監督だった。
とにかく接客の指示が的確。具体例とかも出してくれるから超絶わかりやすい。「〇〇ちゃんはこんな感じのお客様が多そうだから、このワードを意識して接客してみたらどうかな?」とか、猿でもわかりそうなアドバイス。
この先生のおかげで担当していただいた同期はもれなく全員売れる事ができた。コーチングで同じ労力でも成果が段違いに変わる。
後輩に些細なアドバイス
同じ店舗に勤めていればいい先生を共有することができるんだけど、そう簡単にはいかない。皆それぞれに事情があって働く街と店を選ぶ。でも売れたい、稼ぎたい気持ちは同じだ。
ある日頑張ってるのに芽が出ない後輩に先生の話をした。でも彼女は私の店で働くことはできない。「私、どーやったら稼げると思います?(笑)」「早口を直しなよ」そう言って彼女のお客さんにウケそうな話し方をしてみせた。
忘れた頃に彼女から連絡が来た。「指名が増えたんです!素っ気ないってアンケートが無くなりました!!」ただ早口を直すだけ。これは他の先輩からも散々言われていた。でも具体的にどう直したら良いかのモデルが見えなかったんだと思う。
彼女とは共通の知り合いが多かったのがあって、後輩とか同期が「どうしたら良いと思う?」ってダメ元で段々電話をしてくることが増えた。
もぐり講習嬢の誕生
人徳も人望もない私に電話相談が来る、そんな流れができた頃に私は業界を引退する。後輩、同期、先輩とはいえ私にとっては友達だ。長年私生活ともう一つの世界を持ってることに慣れすぎてしまって、今更連絡を取るのをやめるとかは考えていなかった。
むしろもぐりの講習業のベースができてしまった。仲間内での慣例なんだけど、引退した人には現役が食事代とかお茶代を出す。流石にそれは固辞してたんだけど、相談に乗ったときだけはコーヒーをご馳走になることにした。
相談内容は移籍先の相談から、部屋の照明で顔に影ができておばさんに見えるとか、フェラの仕方教えてまで何でもござれだ。でも些細な困り事こそ相談しづらいし、答えが思いつかなくてストレスが貯まる。それを私なんかが解決して、楽しく働いてくれるならそれが良い。
そのうち私が子供を産んで、呼び出しに応えるにはベビーシッターを手配しないと身動きが取れなくなった。そこで皆が気を回してくれて、ベビーシッター代と言いながら小遣いをくれるようになったり、友達を紹介してくれるようになった。
自分で営業したり意図した訳では無いけど、引退して大体10年経つけど今月も誰かのお悩みを解決するお手伝いをさせてもらっている。
でも付きまとう大きなリスク
でも講習稼業にリスクが出てきた。私には少し大きめの子供がいる。まだ風俗とかソープの意味はわからないと信じたいけど、数年経てばわかってしまうと思う。
今でも電話での会話とかに気をつけてはいるけど、バレるんじゃないかとヒヤヒヤしてるのも事実だ。職業オープンなイカれた女の自覚があるけど、子供にだけはバレたくない。
それでも今月も電話が鳴る。「もう断ろうかな…」とここ何年かは毎回悩む。だけど困ってる女の子を放っておけない性分だ。ローションとディルドを隠し持って今月も私は出かけていく。
多分来月も来年も、おそらく子供にバレるまで辞めないんじゃないかと思う。
誰もが優秀じゃない
見て盗めるのは筋がいい子。言ってわかるのは賢い子。言ってもわからないのが普通の子だと思う。私が居た頃の風俗界隈の女の子たちって、普通以下が多数、一握りの天才と少しの賢い子って構成に見えた。
その子達が業界を嫌いにならないで、稼いでくれたほうがいいことだと思う。稼げなければ病んじゃうし、病んだ風俗嬢ほど接客されてキツイものは無いんじゃないかと思う。
女であれば誰でも稼げる業界が風俗業界だ。頑張るベクトルの問題で、正しいベクトルを知るだけで稼げる。それで早く足を洗うのもいいし、伝説になるのも良い。
賢い子たちは勝手に稼いでいく。でもちょっとぼーっとしてたり、具体例が無いとわからない子達はもがくし、苦しむ。私は隣でそのあがきを見てきた。
もし私なんかがその苦しさを軽くする手伝いをできるなら、喜んでする。私は18歳から21歳まで3年間苦しんだ。売れなくて恥もかいたし、売れないからイイように使われて苦しい思いもした。
売れればそんな思いはしなくて済む。風俗って仕事はハードだ。余計な煩わしさとか苦労なんてするもんじゃない。
その煩わしさとか悩みを消すのが講習員の仕事なのかな?と、女の子たちと話してて思う。それに、自分が講習した女の子が売れていくのは楽しい。もうこの歳でソープ嬢はきっついけど、アシストした女の子がNO.1になるのは自分がいくつになっても見れる。
どんな女の子でも稼げます!的な風俗業界求人のアレ(笑)アレを本当にするのがもぐりの講習員の仕事だと思う。だから細々と今月も私は講習を続けている。